IE9ピン留め
カッコいい舞台。どのシーンをとっても、一つ一つがフォトジェニックで故アレクサンダー・マックイーンの衣装をまとったギエムのクールなことといったらない。しかし、そのフォトジェニックさからもう少し「抽象」かと思いきや、パフォーマンスの構成は至って「具象」。

ギエムが「ギロチンの歌」を口ずさむシーンに代表されるような、トップアーティストたちによる「戯れ」が結実した作品といえばいいのだろうか。気負いなく、各々のパフォーマンスの粋を「エオン」の物語を軸に構成してみたら…こうなりました、とプレゼンテーションされているようだった。

数々の作品でマリファントとコラボしている照明デザイナーのライティングは、この作品でも見どころのひとつ。ライティングなしには、この作品もなかったのではと思わせる意匠の数々。

パフォーマーとして現れるのは、ギエム、マリファントと太鼓腹気味のルパージュ。冒頭のテーブルを使ったダンスシーン(テーブルのダンスといえば、フォーサイスのOne Flat Thing, reproducedを思い出すけれど、もっと優しい戯れのような振付)では、ルパージュもギエム、マリファントと同じように動くことを要求されている。

ギエムの身体能力の高さは、ダンス重視というよりはパフォーマンス寄りのこの作品でも、ふとした瞬間に気づかされる。ただし、決してギエムのダンスを堪能するという趣旨で作られた作品ではない。彼女が「ダンサー」ではなく「パフォーマー」としてこの作品に望んでいる様子がみてとれる。違和感をもったのは、「ゆうぽうと」という劇場の設定。シアターコクーン規模の劇場が妥当な設定なのじゃないかと思われる。

# by enterachilles | 2011-11-19 23:59 | dance review | Trackback | Comments(0)

待望のジェローム・ベル初期の傑作、『The Show Must Go On』がやっと日本で上演されるということで、久々にさいたま芸術劇場が一杯になっていました。

私が初めてこの作品を見たのは、オランダにいる頃のダンスフェスティバルだったと思う。
ジェローム・ベル、最高!と思った記憶がまだ鮮明に残っている。それこそ、タイタニックが世の中を席巻した直後で、My Heart Will Go Onのくだりは、同時代的に爆笑の渦だった。

で、今回はJapan Castとは言っても、作品の構成&使用するPopular Musicはどれも同じということで、楽しめるのかしら?と思いつつ劇場に向かったわけですが、やー、愉しめてしまいました。
(唯一、MP3プレイヤーのシーンの曲は違いましたが)。

ホント、これを見逃さなくてよかったです。(さすがに遠路はるばる埼玉まで、2日間通うのはヤメましたけど)必見の舞台でした。

ここから、ネタバレ満載で、かつこの作品を初めて見るときは余計な情報なしに観ないと台無しなので、万が一The Show Must Go Onを見たことがない人がいたら、読まないほうがいいと思います。

タイタニックからはもう10年も経っているのに、やっぱりMy Heart Will Go Onのくだりが秀逸です。他の曲は、タイトルの文言をそのまま舞台で表現しているのに対して、My Heart Will Go Onは、その曲と密接に結びついているタイタニックのシーンを、市井のヒトビトがマジメにそしてカッコ悪く舞台上で演じてみせる、そのシチュエーションの可笑しさとそのシーンの振付の絶妙に間の抜けたかんじが白眉。
そして、沈むタイタニック=沈む舞台に黄色のライトでYellow Submarineって、人を小ばかにしたようで、ちゃんとエンターテイメントで、可笑しくて、いささかシニカルで、オシャレでカッコ悪く、この作品のエッセンスを凝縮した場面として、とてもキャッチー。

曲目リストを挙げると…(覚えている限り上演順)

Tonight
Let the sunshine in
Come together
Let's dance
I like to move it
Ballerina girl
Private dancer
Macarena
Into my arms
My heart will go on
Yellow submarine
La vie en rose
Imagine
Take my breathe away
(ここらへんで、『I』のMP3シーン)
Sound of silence
Killing me softly
The show must go on

各シーンで何が行われるかを描写するのはとっても野暮になりそうなので自制しますが、再見でも何が色あせることもなかったというのが驚き。コンセプト系なのに、そして構成は変わっていないのに再見でも愉しめる不思議な作品。

『ダンス』であることに微塵の拘りもなさそうだけれど、ダンスとして愛せる。ダンス好きというか、パフォーミングアーツ好きとしては、純粋に楽しむという意味でも、作品を見て「パフォーマンスとは?」考えるという意味でも、必見であることに間違いはない。

ちなみに、アフタートークはベルの独壇場。あまり進行がうまくいってなかったのだけれど、ベルの話とフランス語同通さんのGood Jobで、アフタートークまでエンターテイニングだった。
そのフランス語同通さんは、前回のベルの早稲田での講演の際に通訳として仕事をした際に、ベルから「パフォーマーとして出てみない?」とオファーを受けて、今回のThe Show Must Go OnのJapan Castとして参加してた(!)とのこと。どうりでアフタートークに通訳さんが現れた時、「どっかで見たことあるなー」と思ったわけだ。

あと、今回は各曲目のタイトルをスクリーンに一曲一曲出していたのだけれど、そのタイミングの指示を出していたのはベル自身だったそうな。そして、大事なMy Heart Will Go Onに行く前に、「そのタイミング間違っちゃったんだ~ゴメン!」と告白してた。うーん、彼自身のキャラクターも相当イイね。というわけで、彼の他の作品も招聘希望だわ。

# by enterachilles | 2011-11-12 23:29 | dance review | Trackback | Comments(0)

ビントレーの全幕とは、私やっぱり相性が悪いなぁ。なんだろう、『アラジン』よりは遥かにマシではあったものの、「ダンスの楽しさはどこ行ったー!君は振付家なのか、それとも演出家なのか!?」と詰め寄りたくなる感がどうしても拭えません。話の展開部分での細工は凝っているんだけど、肝心のダンサーの動きには全く面白みが感じられない。なぜあそこまで単調な振付にしてしまえるのか…。せめて題材としてビントレーの『エドワード二世』なら見てみたい気もするけど、もうパゴダの再見はないと思う。

英国の被り物キャラの伝統はよくわかった。タツノオトシゴに、皇后のタコ衣装、水木しげる風妖怪、深海魚。まさか、パゴダ人=パゴダの被り物をまとったキャラクターとは思わなかったわ。あと、被り物ではないけれど、コスプレ満載の4人の王子。辮髪にキセルの東の王は、私にはアヘン戦争が想起されるのだけど、大丈夫なんだろーか。本拠地(バーミンガム)でもやるんだよね?中国系の人もたくさんいるよねー、かの国は。ちょいブラックな(シニカルな)童話の読み替え風演出は、AMPの白鳥の例を引くまでもなく受けるだろうけど、それにしても演出の意匠に一貫性を感じられないのは私だけなのだろうか。全般的に、とっちらかってるなぁ、と。

1幕は、かぐや姫と眠れる森の美女と鳥獣戯画と、なんだか色んな要素がごちゃ混ぜ。とりあえず、複数の国のヒトから怒られそうな4人の王子。あと、皇帝じゃなくて帝だよなー、MIKADO。菊の国=日本だとすると。
2幕はくるみだった。構成がまんま。主人公=さくら姫がクララ。サラマンダーのお仲間たちは、水木しげるか。
3幕は、リア王風味。富士山の上に打ち捨てられた帝を、娘が救いに来るんだもの。

しかし、主役のお二人の踊りは良かった。小野さんの可憐さは爆発してた。チョーカワイイ。あのイノセンスあふれる存在感は、得難いものがある。さくら姫の不遇の兄=福岡さんも、3幕PDDの踊りが大きくて目を見張った。振付自体はさしておもしろくないんですけど…。

そうそう、パゴダ+バリ舞踊が納得いかず(仏教×ヒンズー教じゃん!と)、wikiに「pagoda」を聞いたら「必ずしも仏教的用途の建築物に用いられるわけじゃない」だって!日本人トラベラーとしては、パゴダ=上座部仏教の国の仏塔に用いられる用語、という理解じゃないだろうか。とにかく、私のビントレー全幕ものとの相性の悪さを痛感した作品でありました。振付が疎かすぎます。

# by enterachilles | 2011-11-06 23:10 | dance review | Trackback | Comments(0)

プログラムは、ベジャールの春祭、フォーサイスのリアレイ、キリアンのパーフェクト・コンセプション、エックのアジュー。ギエムのフォーサイスとエックに負けないプログラムを、ということでベジャールとキリアンという巨匠系を入れ込んだんだと思うけれど、正直ギエムの別格っぷりを際立たせる結果に終わった感が否めない。

特にエックのアジューが、おもしろいほど別格だった。
「アパルトマン」を思わせる衣装と美術だけれど、シンプルなモノクロの映像を効果的に使用したオープニングから、「超人ギエム」っぷりはなりを潜め、すーっと引き込まれていく。「ルナ」の神々しさ、「シシィ」の狂気、「インザミドル」のエッジィさ、「Two」の格好よさなど、他のコンテンポラリー作品で見せる姿とは全くことはる種類のギエム。それらの作品で現前するのが硬質で確固としたthe Guillemなのであるとすれば、「アジュー」で見せるのはJourney。fragileというのとは違う、繊細なギエムの「揺らぎ」が、どこか優しさのある、どこか切なさのある、そしてギエムのステージとしてはどこか不思議な「感動」を与えるものであった。
そした、この作品を見て「ああ、ギエムも自分のキャリアの終わりを見つめているのだなぁ」という感慨を持った。(悪い意味ではなく)

フォーサイスのリアレイは、ぎりぎりまで絞られたライトと繰り返される暗転で、観客の集中力を要求する作品。そのほの暗いステージ上で踊るギエムとムッルは、Tシャツとパンツというシンプルな衣装で男女の差というものを感じさせない。フォーサイスとギエムのクリエイションということでは、「インザミドル」程の衝撃はない。が、なんだかこの作品も、彼女自身が自身のキャリアの終わり方を模索しているように思えた。「リアレイ」でやっぱ、ギエム凄いわ(相当難しいことを凄いスピードでこなしてたりする)と思ったのだけれど、「アジュー」がその記憶を上書きしてしまった。

「春の祭典」は久々に見たけど、なんか薄いなぁ、と。ベジャールの作品の衝撃は、きっと時代とともに古びていく種類のものなのだろうけど、それでも彼の春祭には「野生」が肝要だし、ベジャールを見てきた人にはそれがないと「薄い」と感じられるもの。吉岡さんの踊る「生贄」の清廉でどこか生生しい存在感はさすがだと思ったけれど、全体としてはちょっと残念な感がある。

「パーフェクト・コンセプション」は…途中寝ました、すみません。なんか、緊張感がないステージだったもんで(言い訳)。以前見たときは、もっと張り詰めるものがあったと思うのですが、うーん、キャストの問題でしょうか。

Bプロの全体の構成としては、不満が残る点もかなりあるのですが、ギエムの「アジュー」だけでも見る価値があった。そんな幸せなステージでした。

# by enterachilles | 2011-10-30 23:05 | dance review | Trackback | Comments(0)

Hope Japan と銘打たれた今回のギエム・オンステージ。Aプロは、クラシック系(といっても非古典)のプログラム。東バの白の組曲、ギエム+ムッルのマノン寝室のPDD、東バのスプリング・アンド・フォール、ギエム+ムッル+東バの田園の出来事。

白の組曲は、難しい。
以前見た、ルテステュのシガレットが忘れられないが、今回の東バの白の組曲は、ちょっと期待外れだった。
小出さんの「フルート」はしっとりと、一人圧倒的に音楽性にあふれる踊りで、東バの中では断トツに好きだなぁ、と思ったけれど、吉岡さんの「シガレット」はらしくなく、エキゾチックなひねりのある動きが生かし切れていない。アダージュの上野さんは、役付き系の古典よりはアブストラクトな今回の作品のほうが合っている。ただし、全体的に白の組曲の華やかさに乏しく、「前座」感が否めない。

ムッルがマノンのリフトで軽く失敗してひやっとしたものの、久しぶりに見るギエムのマノンは以前と比べてはるかに若返り、少女のようだった。ギエム自身の踊りにはまったくかげりがなく、もうポワントで踊れないので仕方なくモダン的な作品に移行したのではなく、彼女自身の興味がもはや役付きのカッコ付きバレエにはないのだろうな、と思わせる。

「スプリング・アンド・フォール」は吉岡さん+高岸さんのPDDで、さすがの存在感ではあるものの、この手のノイマイヤーはちょっと苦手なのだよなー、と。

「田園の出来事」は、正直どうしてギエムがこの作品を踊ることにしたのか、私には理解ができないところ。作品全体としては、ヴェラの小出さんの突っ走りっぷりと、ギエムとの対峙に目を見張るものがあり、イスライエフにダウエル御大が登場という贅沢さも加わり、一幕もののステージとして面白い。ベリヤエフのムッルが狭い世界の田舎で局所的にモテモテというシチュエーションが可笑しいといった側面もあり。ギエムがわさわさした踊りにくそうな衣装(アシュトンの、リボン遣いとかディテールのおもしろさはあるけれど)で、何のわずらわしさもなく自然に踊り回る様は凄いなぁ、と思いつつ、最後まで入り込むことのできない世界観だった。ナターリヤが最後に一人残される様は、オネーギンのラストを思わせるけれど…ということで、ギエムのタチアナを見てみたかったなぁ、と思わせる幕切れだった。

# by enterachilles | 2011-10-22 23:13 | dance review | Trackback | Comments(0)

ヒトから頂いたチケットで堪能~。
日生劇場なんて初めて来たよ~、というわけで、老人にも優しい全階エスカレーター付きの設計に驚く。
観客の年齢構成ボリュームゾーンがバレエなんか比較対象にならないくらい上だしね…。東京文化会館の2階以上が無理な人たちも大勢。というわけで、バレエの観客層を広げたければ、東京文化会館にエレベータやエスカレータ導入をしたほうがいいと思う。(ま、ただし長期的な視野でマーケットを広げたければ、やっぱり若者開拓しないとダメだけど)

しかし、玉三郎の舞台はいつも孤高で、その孤高の芸に観終わると陽性な興奮というよりは、陰な美に耽溺して沈み込む。端的に表現すると、玉サマの芸は他の誰にも真似できないだけに物悲しい。

演目は3つ。「傾城」「藤娘」「楊貴妃」。

「傾城」の艶やかな絵面で「相変わらず美しいわぁ」、と観客をうっとりさせ、「藤娘」の娘らしさで対比を見せ(幕開きの鮮やかさに客席がざわめく)、「楊貴妃」のハイブリッドさ(お能っぽい装置、京劇っぽい衣装、ハイブリッドな動き)で彼だけの世界を作り出す。正直、始まる前はこの演目の並びってどーなんだろう?と思っていた(さすがの「傾城」で締めるのが確実じゃない?と思っていた)けれど、結局一番「楊貴妃」にぐっときていた私は、やっぱりまだまだ甘いのだなぁ、と。いや、玉サマ、ご自分の美の世界の見え方をよく御存じです…。感服。
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# by enterachilles | 2011-10-09 23:15 | dance review | Trackback | Comments(0)

最近えらく中村さんと組んでいる印象のある首藤さん。そういえば、初台に着いてふと思ったんだけど、新国に首藤さんが出ているって不思議。新国と犬猿の仲の東バ(というか、そこの監督S氏)出身の首藤さんが、初台の舞台かぁ、と。まぁ、NBSはコンテに興味ないっぽいのでいいのかしら。

「Shakespeare THE SONNETS」は、新国立劇場の中劇場前方をステージにするために潰すという、物理的にも豪華な公演。これで東京公演が2回のみというのは、ちょっともったいないような。兵庫公演はあるみたいですが。

構成は奇をてらったものではなく、3場仕立てで、詩人と美青年を軸にロミジュリのデュオがあったり、オセロや真夏の夜の夢などシェイクスピアの劇作品からキャラクターを借りてきていたりして、入りやすい。

普通にロミジュリのデュオは堪能したし、やっぱり中村さんの踊りは貫禄がある。首藤さんとシンクロして踊るパートは、ステージの密度がぎゅーっと高まる。70分休憩なしで、あの広い空間を2人でゆるみなく支配できるというのは凄い。

あ、ちなみにFair Youth=美青年って書いてあるのを見て、公演プログラムをぼやっと読みながら、「fair」の単語の意味ってまだ感覚的につかめてないわーと思う。辞書的にはわかるんだけと…。あまり口語的には使わない気がするけど…。

# by enterachilles | 2011-10-01 22:47 | dance review | Trackback | Comments(0)

「愛は官能を越えるのか」…凄いコピーですが、熊川版白鳥を見るのが初めてな私には、ある程度コレでK版のコンセプトが端的に表現されているのかな、と思わせるわけですね。白鳥と黒鳥は「愛」と「官能」という位置付けという。

以下、簡単に私がスタンダードだと思う白鳥(主にマリインスキーのセルゲイエフ版)との違いを羅列します。

①エンディングは、あの世で幸せに。
②一幕二幕はスタンダード、三幕四幕は音楽の構成も演出も、奇抜じゃないけど非スタンダード。
③マイムはきっちり。
④衣装は思いっきりファンタジー。
⑤二幕で王子は愛を誓わず。
⑥スペイン軍団はロットバルトの一味。
⑦オディールのヴァリアシオンは、私好みの悪女バージョン。
⑧全体的にブルメイステル版を参照している雰囲気。
⑨ただ、白鳥群舞の衣装がロイヤル風のロマンティック・チュチュなのは勿体無い。

ちなみに、この日は本当に熊川氏がノリノリキレキレでした。前回観たときは、そろそろ熊川氏もテクニックに翳りが…なんて思ったけど、私が間違ってた。どうしたらポワントでもないのにあの高速回転が出来るんだろうか。跳躍系のパもキレキレで、舞台袖の細かい演技もノリノリ。自身の演出版て、やはり重要だな。

加えて、オデット/オディールの荒井さん。Kバレエが初期は熊川さんの人気故に成功していたのだとしても、これだけ今も成功しているのは、早い段階で荒井さんをKに引き抜けたことも一因でしょう。熊さん版はどれもスピーディーだけど、主役のお二人はえらいスローテンポの音楽で踊る。テクニックが確かじゃないと、あのテンポは無理。荒井さんはそれをものの見事にこなす、さすが。熊さんの意図をちゃんとステージ化できるのには、やはりダンサーのレベルが必要。この二人=熊川さんと荒井さん=のレベルの舞台を維持できるかどうかに、Kバレエの将来はかかっている。黒鳥のPDDのアダージョでも、凄いバランスで喝采を浴びていた。熊川氏のレベルに拮抗するような興奮をもたらす踊りで、ステージ全体の密度と緊張感を上げるためには彼女レベルのダンサーが必要なのだと思う。

今更ながらのK版白鳥だけど、熊川さんが引退する前に一度、荒井さん+熊川さんの主演でこの白鳥は見ておいたほうが良い。

# by enterachilles | 2011-09-30 23:38 | dance review | Trackback | Comments(0)

ヴィシニョーワのジゼル。2006年のバレエフェス全幕プロでマラーホフと踊ったのを観て以来、5年ぶりか。濃いのは当然、その濃さがチュージンとの組み合わせでどう出るか?が見どころと思ったけれど、やはりまだチュージンのオーソドックさではアルブレヒトが置いてけぼりな感が否めない。けれど、ヴィシニョーワの全幕は見逃せない。(東バのジゼル、パ・ド・ユイットだけがプロダクションとして好きじゃないんですが…)5年前ともまた違う濃さ。舞台上の他の誰とも段違いな強度。

花占いから狂気の宿るジゼル。冠動脈疾患というより精神神経系疾患系。(そもそも、オーソドックスなジゼルの死因設定は、心房細動なんだろーか?)

チュージンはやはり前回ダンチェンコのアンチヒーロー=フェビュスの印象が強く、見る前はアルブレヒトのイメージがわかなかったが、端正なステージマナーと鮮やかなグランジュテで正統派なアルブレヒト。冒頭、アルブレヒトが「お城に婚約者がいるじゃないですか~」とたしなめられるマイムはデフォルトだったっけ?チュージン仕様か?

高木さんのミルタは、ジゼルのウィリーというよりはラシルのシルフ系の踊りの質かな。足音一つしない、足捌きが見事。ただ、ミルタには冷徹さがイヤという程あってもいいかと。

ヴィシニョーワのジゼル一幕は、陰と陽(=狂気と生気)を一人で体現し、死を色濃く浮き上がらせる。そして二幕ではウィリーという新しい自分に生まれ変わることで、狂気優位(ウィリー=此岸からみれば狂気)になり、失われていく生気=生を逆に立ち上がらせていく、というのがなんとなく私の解釈。
おそらくジゼルへの正統的なアプローチは、一幕=生(此岸)、二幕=死(彼岸)なんだろうけど(そしてその対比)、一幕も二幕もそれが混在し、浮き立つのは一幕=死、二幕=生だからヴィシニョーワのジゼルは個性的にうつるのか、と。

しかし、ヴィシニョーワ主演公演の客層観察=男性客比率が高めだなー。

# by enterachilles | 2011-08-18 23:28 | dance review | Trackback | Comments(0)

オシポワ&ホールバーグのマクミラン…見る前は全く想像がつかなかった。そもそも、ボリショイのダンサーとABTのダンサーですよー、と。ま、目的はもっぱらオシポワ嬢のジュリエットってどんなの?という好奇心でした。ホールバーグは正統派な踊りをするんだけど、あまり印象に残らず。

端的に言えば、オシポワはジュリエットだけれど、マクミランのジュリエットではない。あれだけ上演を重ね、多くのダンサーのレパートリーに入ると、振付家の手を離れてしまう(しかも存命の振付家ではなければさらに)ものというのも止む無しという思いもあるが、それ以前にオシポワがあまりに踊れすぎてしまうせいなのではないかと。
オシポワは難しいパをサラッとこなしてしまうだけに、マクミランのロミジュリの「ギリギリ感」に欠けるんだと想像するのですね。淀みなく、すべるように舞台を駆け巡る様は踊れ過ぎていて逆にマクミランじゃなかった。細かい動作もアレンジしてたし…(これは意図的)。一方、死体っぷりは圧巻で、人形ぶりも身体能力によるのだと痛感。

この時期に来日してくれることには素直に感謝しなきゃいけないのは分かっている。ただ、何度観てもABTはカンパニーとしてグッとくる要素がない。一幕の乱闘シーンもへにょへにょで気が抜けた。先月の新国よりはオーバーオールでは良かったけど。

だから(?)なのか、今さら気付いたロミジュリのポイント。バルコニーのPDDは、音的に考えるとロミオ視点のシーン。=ロミオの目を通したジュリエット像を踊らなきゃいけないのだな。だからやっぱり、一幕はロミオの物語で三幕はジュリエットの物語でいいんだ。

で、何故か、カーテンコールはやる気ゼロのオシポワ嬢。お腹痛いの???
それとも、客席の入りがさみしいのに納得いってないのか…。一階後方もガラすきだったし、今回は相当動員に苦労してそうでしたね。それか、オケの出来のあまりのキビしい感じにご立腹?

# by enterachilles | 2011-07-29 21:56 | dance review | Trackback | Comments(0)

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