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ヨルダン帰国の翌日にバレエ・ブランはなかなかシュールです。
しかし、小野さんの白鳥は見逃せないと初台に向かったのでした。

新国の白鳥を観るのがもの凄く久しぶりであることに気付いていなかったのですが、幕開きがプロローグ付きブルメイステル版風で「あれ…あれ??」と戸惑う。かと思いきや、ブルメイステル版風なのはプロローグがついているだけだったり、ルースカヤを入れてるのはいいんだけど振付が酷すぎて直視するのが辛かったりとか、一応「牧阿佐美版」らしいですけど、いろんなものの寄せ集め(黒い白鳥がいるのはセルゲイエフ版風だし)でしかないのが痛い。セルゲイエフ版じゃダメだった理由はなんなんでしょうかねー。ふぅ。

そんな中、オデット/オディールの小野さん、ジークフリードの福岡さんの主役ペア、ロットバルトの厚地さんは真摯な踊り。小野さんは、決して私好みの「クールビューティー系」王女オデットではなく、どちらかというとGirl Next Door系の姫オデット。王子との出会いの場も、凛とした拒絶からの雪解けではなく、戸惑いからの雪解けが印象深い。2幕はやや硬い印象を受けたことは否めないが、そんな中にも彼女の音楽性と正確なパの運びは光っている。
オケの大胆な鳴らしっぷりの中、アナニアシヴィリばりの速度でグランフェッテのシーンを迎えたところ以外は、音楽との乖離を一つも感じさせない(音楽を観客に意識させることない)のが彼女の凄いところ。ただし、白鳥が小野さんのレパートリーの一角として存在感を示すためには、彼女なりのオ/オ像をより鮮烈に描き出すことが必要になるのだと思う。

# by enterachilles | 2012-05-06 22:35 | dance review | Trackback | Comments(0)

日本人が入るのが一番難しいバレエ団て、POBよりもエイフマン・バレエなのかも?と、エイフマン・バレエから客演のメイン3ダンサー=アンナ、カレーニン、ヴロンスキー役=の体格を見て思うのでありました。

エイフマン版のアンナ・カレーニナは徹頭徹尾「シリアス」。スピーディーな全2幕の舞台は、エイフマンが中途半端な色気を出さず、ひたすら「アンナとカレーニンとヴロンスキーの3人」 vs 「群舞」にフォーカスを置いているからこそ可能になっている。「群舞」に3人のソロやPDDが挟まれる構成は、グリゴローヴィチのスパルタクスによく似ているけれど、エイフマンのアンナ・カレーニナはあのスパルタクスの猥雑な熱気というよりは鋭角な冷気を伴っている。正反対な雰囲気を醸し出す作品。

スピーディーな構成を感じさせるのは、エイフマンが3人 vs 群舞からフォーカスをぶれさせていないのもそうだけれど、振付もそれに一役買っている。
エイフマンは、振付をするときずーっとリフトのことばかり考えているんじゃないんだろうか?と思うほど、振付の印象はとにかくリフトリフトリフト。特徴的な立位でのリフト(だから、主演男性ダンサーは絶対長身じゃないとダメなんだろうな)、女性がリフトされながら脚を曲げたり伸ばしたりという高度なリフトと、男性ダンサーはもちろん女性ダンサーに要求される運動能力は半端ない。リフトが多いせいで、「普通に」地上で踊る箇所は少ないように思えるけど(そしてステップというより、要求されるのはバットマンとその脚の強度)、踊りの部分も殆ど「繰り返し」のパがないのが特徴的。所謂西洋的な左右対称の「シンメトリー」の美という要素は、そこに見出されない。プティパの正反対。

衣装チェンジも頻繁にあり、主役の3人、特にアンナ役は過酷だ。ヴロンスキーともカレーニンとも、タイミングが一歩違えば大事故というリフトをこなす様は、役の上というよりは実際的にも命を削って踊っているように思えてくることが、更にこの作品のインパクトを高めているように思う。

終幕でアンナが追い詰められたシーン、ベジャールの春祭的なアンナと群舞の振付は直截的過ぎる感があるが、やはり何度見てもあの幕切れの機関車は秀逸。観客にも妙な緊張感をもたらす作品ではあるが、再演を希望する作品。そして、次回は新国ダンサー主演でも見てみなきゃと思わされた。

# by enterachilles | 2012-03-17 22:03 | dance review | Trackback | Comments(0)

マイヨー、ちょっと見るの久しぶりかもしれません。前回の来日公演はパスした気がする。
マイヨーといえば、やっぱり印象深いのは(たぶん)マイヨー傘下でのモンテカルロ初来日公演『ロミジュリ』ですね。オーチャードで見て、興奮した思い出があります。そのスタイリッシュさに。今回の『シンデレラ』もそれに連なる系譜でしょうか。ただし、今回はそこまでビビッドではなかったかなぁ…私がスレてしまっただけなのかもしれませんが。スタイリッシュさが、誰もに受け入れられる趣味の良さの範疇で逆に鼻についてしまったというか…。

ちなみに私が見たマチネは小池ミモザさんが仙女で登場。結局、今回の日本公演、コピエテルスの仙女はなかったんですね。というわけで、マイヨー版のシンデレラは「準主役」。タイトルロールだけど、主役ではないのですね。では、誰が主役かと言われると…仙女も「物語」の主役ではない。「主演」はシンデレラの父でしょうか。王子は準主役ですらないかな(足フェチ王子だ)。

で、かつてコピエテルスとのロミジュリが夢のように美しかった、クリス・ローラントがシンデレラの父親を演じております。あの時に比べると、老けたなぁと思ってしまうもののその枯れ具合が絶妙です。後妻にたぶらかされている様の情けなさも、なぜかサマになる美中年男子っぷり。終幕、金ラメ降り注ぐ中のシンデレラと王子を見つめる父=ローラントの切なさにはぐっときます。

全体的にゲイテイスト溢れる舞台(もともと、バレエのシンデレラ自体がどうもゲイテイストにもっていきやすい感じはあります)に、ぐるぐると振り回すリフトがくると、おぁ、マイヨーだねと思い出すかんじでした。凄くエッジーだったりするのではなくて、安心安定の奇抜さというべきか。衣装や美術のデザインを含め、「現代的」なんだけれど誰もが受け入れられる趣味の良さ。ガラスの靴ならぬ、金ラメの靴(だからシンデレラは一切ポワントを履かない)を使ったり。色彩的には金キラキンです。仙女が顔を含め全身金ラメで塗りたくられているもんだから、仙女と踊った後はみんな金ラメだらけになっているのが面白かった。

しかし、客席の空きっぷりがなんとも切ないかんじでした。タイミング的にも2月の怒涛のバレエ月間後で客足が鈍かったんでしょうかねぇ。あと、やっぱり「旬」な感じがマイヨーでは乏しかったのは正直なところかな。

# by enterachilles | 2012-03-10 23:02 | dance review | Trackback | Comments(0)

バランシン→フォーサイス→バランシンのトリプル・ビル。

ワルプルギスの夜、モスクワで観たのはバランシンではなかったというオチでしたが、都さんを観るだけで眼福。都さんのパートナーとして出演のテューズリーは、出番としてはほんのちょっとでもったいないなぁ…というかんじですが、都さんとのパートナーシップが鉄壁。

ちなみに演目は、『ウェスタン・シンフォニー』『ステップテクスト』『ワルプルギスの夜』の3作品。

ウェスタンシンフォニーは、私には理解できないバランシン作品の一つであります。ウェスタンという題材も全くぐっとこないし、衣装も…ねぇ…と。それでもラストの全員フィナーレのダンスの迫力はありました。

ステップテクストは、可もなく不可もなく?うーん、緊張感という意味で今一つだったかも。

# by enterachilles | 2012-03-04 23:16 | dance review | Trackback | Comments(0)

ついにコジョカルも日本で冠公演をうつようになったんですねー。しみじみ。ローザンヌは遠くなりにけり。
私、決して熱心なコジョカルウォッチャーじゃなく、どちらかというとコボーとのさわやかカップルの演目の賢い選び方とか、スマートだとは思うけどなんかグッとこないのよねーと思っていた輩でした。でも、今日は素直に感動。

ちなみにAプロは日程が合わず、観に行っていません。Bプロも厳しかったのですが、コジョカルのノイマイヤーに興味があり、こちらのプログラムは急遽参戦。
まじまじとプログラムを見ると、コジョカルもつのか?という活躍っぷり。Bプロは4作品に出演。7演目しかないところを…しかも1本は30分ものの小品。ちなみに、プログラム構成には公私ともにパートナーであるコボーがかなりかんでいるのではと邪推。コボーの最近の活動範囲から、そっち系への色気が感じられるので。

さて、そのプログラム構成は、第一部=PDDの競演、第二部=30分の小品、第三部=全員参加(リアコブ除く)のドンキ競演と、見事にカラーが違います。コジョカルにはかなりの負担がかかるプログラム構成ですが、うまい!と呻らざるをえない。見せ方をよく知っていますし、演目チョイスも正統古典、ノイマイヤー、創作1幕もの、ガラお馴染みのディベルティスマンと、真面目さとお祭りっぽさをバランスよく配置しているのが、これまた憎い。

「ラリナ・ワルツ」 コジョカル/カスバートソン/マルケス/コボー/マックレー/ムンタギロフ/ポルーニン

幕開きの賑々しさと、顔見世的演目としてワークしておりました。クラシックのパをあくまで超えない範疇で、かつ現代的なスピーディーさと適度な派手さを織り交ぜつつ、といった風情。その後のPDDの競演に期待をもたせる。振付のリアム・スカーレットは最近よく聞く名前ですねー。

「タランテラ」 マルケス/マックレー

マリボリ・ガラでテリョーシキナとサラファーノフが踊った「タランテラ」とは全く異なる風味のバランシン。(半分元)マリインスキー組が、シャープでキリっとしたクールビューティーなタランテラであったのに対し、ロイヤル組は茶目っ気分量多めなタランテラ。特にマックレーのお茶目な動きはイメージになかっただけに新鮮だった。マルケスはちょっと動きが重い。キュートではあるんだけど、こんなダンサーだったかしら?

「くるみ割り人形 グラン・パ・ド・ドゥ」 クリメントヴァ/ムンタギロフ

ENB組で、どちらも初見のはず。どうやらクリメントヴァはベテランプリンシパル、ムンタギロフは若手プリンシパルらしい。ENBのサイトをちらっと見たら、プリンシパルは「senior principal」と「principal」に分かれている模様。グラン・パ・ド・ドゥは誰版なのかな?見慣れた振付とはちょいちょい違っていました。イーリング版?くるみはあまり見てないからなぁ…。クリメントヴァは、折り目正しく安定感のある、品のある踊りでした。身長があるので存在感あり。ムンタギロフは、勢いある若手にしてはお行儀良い踊り。ENB組の端正なくるみGPDD。

「ディアナとアクテオン」 カスバートソン/ポルーニン

噂のロイヤル突然退団Boyとバッセル風カスバートソン。ポルーニンはワイルド系もイケますといったテクニシャンだし、バレエをやめてしまうには惜しいよなーと。英国メディアが騒ぐわけもわかりました。もう踊りはいいや、だけど約束だから出なきゃいけないし、なテンションでこられたら萎えるわ~と心配してたのですが、そこはプロフェッショナルでした。全幕もので一回見てみたかった。面白い個性も持ってそうなのに。カスバートソンは、前半はまさにバッセルのようなどっしりとした踊りでよかったのですが、後半ちと乱れてしまい残念。コーダの上手奥からのグランジュテのシークエンスの最後でつまづき、その余波からか後のフェッテの踵も落ちてしまっていました。残念。

「椿姫 第三幕のPDD」 コジョカル/リアコブ

リアコブはこの1演目のためだけに来日してくれたんですねー。いい人。しかも、リアコブ先生はやっぱり盤石です。コジョカルは彼とハンブルグで椿姫を踊ったんですね。いいな、見たかったな。というわけで、ちょっと期待以上で胸がいっぱいになる黒衣のPDDでした。リアコブの葛藤と激情、コジョカルの嘆きと激情。前半のマルグリットが憔悴で体をあずけるような振りがあまりにも自然で、「許しを請う」わけではなくただどうしようもなくアルマンの元に来てしまった、その破れた熱情が痛いほど伝わってくる。両者ともに持て余した感情をぶつけ合うPDDは、ガラ公演の1演目とは思えない濃さで放心。
ただし、クライマックスでどこかの大バカ者たちが携帯の着信音を鳴らしてまして…もう、どう言ったらいいのか…ステージの二人に申し訳ない。こういうお馬鹿さんたちは、マックでハンバーガーでも食べて家でバラエティでも見ているのがよろしいかと。


「ザ・レッスン」 コボー/コジョカル/カスバートソン

コボー、こんなにヘンタイが似合っていいのかしら?仮にもロイヤルのプリンシパルなのに。つーことで、コボーはご自分のキャラクターをよく知っている、賢いダンサーということでファイナルアンサー。コジョカルの無邪気なレッスン生が徐々に恐怖の表情を浮かべていくその変貌も見どころではありますが、これはコボーが自分の変態バレエ教師っぷりを見せつける、オレオレ系サスペンスバレエ。挙動不審なバレエ教師が、実は連続○○であったという、30分で見せる作品としてちゃんと起承転結がついてかつ見せ場もあるという面白い作品。よく考えられている。カスバートソン演じるピアニストも、ちゃんと最後にキーとなる場面があったりして。ま、ピアニストはほとんど踊りという踊りはないですが。あと、美術も秀逸。
いや、でもやっぱりコボーの変態ちゃんキャラが見どころであると断言しましょう。この作品、もうコボー以外で観たいと思わないな。

「ドン・キホーテ」 コジョカル/カスバートソン/クリメントヴァ/マルケス/コボー/マックレー/ムンタギロフ/ポルーニン

ちゃんと最後は楽しい演目で締めます。抜かりなし。ひたすらに技巧を見せる、楽しいディベルティスマン。コジョカルとコボーのアダージョは、コジョカルの驚異的なバランスに喝采。ロイヤル+ENB男子チームの跳躍と回転の競演はただただ興奮もの。(いつから英国バレエ界はこんな技巧派男子をリクルートするようになったんだ?)ちゃんとコボーも踊ったし。マックレーのテクニシャンっぷりはここでも光っておりました。ポルーニンも凄かったけど、私としてはムンタギロフの王子然としたところと、ガラで盛り上げ役もできますというオールマイティーなところに感心。彼、そのうちロイヤルに移籍しそうな予感がするな…。

こんなところで、とにかくコジョカルは彼女の芸の広さと八面六臂の活躍(休憩をはさむとは言え、3演目連続出演だし)を見せてくれて、これからはコジョカル公演も逐一チェックしないとなーと思わされた一夜でありました。

# by enterachilles | 2012-02-21 23:57 | dance review | Trackback | Comments(0)

勘九郎襲名披露です。最近歌舞伎のチケットを自分で取ることはなく、ほとんど会社のおねーさん任せ…。お任せで心苦しい今日この頃。

さて、新橋演舞場は華やかというか、もう人多すぎ。めで鯛焼きも3階で売ってましたし、全体的に目出度いモードでしたが口上は夜の部だったので、昔誰かの襲名披露を歌舞伎座で観たときよりは、私の印象としてザ・襲名披露的な印象が薄め。演目で選んだら、観たいのが昼の部だったので仕方ない。

演目は、鳴神、土蜘、河内山。

鳴神は、七之助の雲絶間姫が可憐な色気むんむんで悶絶。
土蜘は、襲名披露ならではの脇まで遊び心な豪華配役。にぎにぎしくて良い。勘九郎の土蜘蛛が華やかで堪能。福助はどーしちゃったんだろう、私が好きだった昔の福助じゃないのよねー。
河内山は、すみません、ちょっと後半寝ました。ニザサマなのに…。

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# by enterachilles | 2012-02-19 23:19 | dance review | Trackback | Comments(0)

関西出張から初台に直行の土曜日。関西病から抜け切れぬままとはいえ、久しぶりのプティのノートルダムは楽しかったです。牧は日高さんの白鳥以来ぶり。

ノートルダム・ド・パリを観るのは何年振りでしょうねー。日本人キャストが土曜日曜ともに降板の代役として、アレクサンドロワのエスメラルダを観られたのはラッキー。日本人キャストでも見ようと思っていましたが、アレクサンドロワのプティを観られる機会、と考えると今後そうチャンスは多くないのでは、と。

プティの作品群を考えると、ノートルダムはちょっと異色かと思う。こんなにダークにダークを塗り重ねたようなプロットの作品ってプティでは珍しいのでは。一時期、ガラでこの作品2幕のエスメラルダとカジモドのPDDがよく踊られていたけれど、最近はノイマイヤーを1作品くらい入れないといけない雰囲気で、プティは追いやられている流れ。ガラでのPDDも、流行りすたれがあるのだ。

が、この作品で面白いのは、PDDだけではない。幕開きの群舞の振付からユニークで、サンローランの原色たっぶりなのにどこかダークな雰囲気を漂わせる衣装と相まって効果的。コールドというよりは群舞、というダンサーの使い方が、エイフマンと似ている。1幕のレッド忍者くんたちの群舞はちょっと謎だけど。特に1幕の群舞、エスメラルダの登場を鮮やかに演出する手腕も見事だし、集団の恐ろしさがよく出ている。ボリショイを観た後だと、群舞の迫力という点では圧倒されるほどではないのだけれど、意外と跳躍系の高度なテクニックを要求される男性群舞の中で、何人か目立つダンサーもいたりして印象深い。

主演陣は、エスメラルダ=アレクサンドロワ、カジモド=菊池さん、フロロ=中家さん、フェビュス=逸見さん。エスメ、フロロ、フェビュスのパドトロワはサポートに弱さが見えてしまいちょっとリハ不足感が漂うけど、フロロのソロが良い。キレのある跳躍が鮮やか。その分、フロロの屈折した怪物のような迫力には欠けるのだけど、別の作品でもこの人の踊りは観たいなーと思わせる。そういえばフロロ、昔は小嶋さんがやってたよなーと思い出したり。カジモドの菊池さんは、故プティが目をかけたという謳い文句(?)だったけれど、もっとカジモドには「やつし」が欲しい。個人的な好みで言えば、若すぎるように見えるのね、カジモドが。全体的に、カジモドとフロロ、フェビュスの変則三すくみ状態のそれぞれの関係性に、もっとねっとりとした緊張感が出れば良いのかと。

アレクサンドロワは、エスメラルダ今までに踊ったことがあるから急遽代役ゲストに決まったのかな>相変わらずプログラム買ってないのでわからず?正直、彼女のエスメラルダはプティっぽいかと言われると微妙で、牧の群舞の中での異質さは拭えない。まず、彼女の脚のラインはプティ好みと言われるラインからすると筋肉がつきすぎなんだと思う。いや、プティ本人に聞いたわけじゃないのでわかりませんが、プティっぽさって脚のライン判断の要素が大きいので…。あと、プティを踊るにしてはアレクサンドロワ姐さんは表情がありすぎるのかな、と。ラカッラとか、所謂プティ・ダンサーって、よく言えばミステリアス、悪く言えば表情ないのが特徴。アレクサンドロワはそうじゃない。もっともその表情問題を感じたのは、カジモドとエスメラルダの有名な2幕のPDD。怯えるカジモドに寄り添うアレクサンドロワ=エスメラルダの表情は、慈愛に満ちていて私が思い描くプティのヒロインとは違う暖かさを湛えていた。とまあ、プティ作品では特にイシューとなる「プティっぽさ」では疑問が残る姐さんのノートルダムであったが、ゴージャスで貫禄ある存在感はこの作品でも健在で魅力的。1幕の群舞の間から忽然と姿を現すエスメラルダのポーズのカッコよさといったら…。
そしてカテコではノリノリ、いい人っぷり全開のアレクサンドロワ姐さん。いつもの漢気に、お茶目さと暖かさとが入り混じったカーテンコールでの振る舞いに、観客みんなが暖かい気持ちで劇場を後にできたと確信したのでありました。

# by enterachilles | 2012-02-18 23:22 | dance review | Trackback | Comments(0)

スパルタクスの後のライモンダは、ちょっとテンション落ちるかもね~なんて思っていた私がバカでした。ボリショイのライモンダは、これぞグランドバレエ!なボリショイの底力を垣間見せるゴージャスな舞台。踊りの力、ダンサーを惜しげもなく投入したステージは、ボリショイならでは。物語の力など借りなくても、これだけの緊張感と盛り上がり。しかも、来日公演でスパルタクス、白鳥、ライモンダをこなしながらモスクワでも普通に公演をうてるわけで。ボリショイ、さいこー。平日公演ばかりであったことについては不満は残るものの、ライモンダという興行的にリスキーな演目をプログラムに入れたジャパン・アーツにも感謝。

全幕を通して理屈抜きに踊りまくりなライモンダなのだけれど、あのアダージョが2幕の終わり、全幕の一部に踊られるとえもいわれぬ風情がある。物語としては大したドラマがある演目ではないのだが。1幕、2幕、3幕でそれぞれ異なる雰囲気を漂わせる振付と、そしてそれを表象する踊り手たち。

おそらくタイトルロールの見応えとしては、前日のアレクサンドロワに軍配が上がるのだろうと想像するけれど、「アレクサンドロワのライモンダ」ではなく「ボリショイのライモンダ」を感じさせるキャストとしてはアラシュ&ヴォルチコフではないのかしら。主役が引っ張る誰々の「ライモンダ」ではなく、ソリストからコールドまでが同じレベルでステージを盛り上げる全幕もの。全員野球的な。しかし、これだけ惜しみなくダンサーを投入したライモンダの次の日が、白鳥のマチソワって…。ボリショイ、鬼畜

ライモンダを踊ったアラシュはキツめの顔立ちで、あまり日本で好まれないタイプなのかも。が、特に一幕二幕のヴァリで踊りの質を変化させていたのに感心した。三幕のヴァリはアクセントの付け方にもう一つ緊張感が欲しいかな。

ライモンダといえば、ウヴァの白マント姿ではありますが、意外にもヴォルチコフのジャン・ド・ブリエンヌがイケてた。ド・ブリエンヌ役のヴォルチコフは、メイクのせいか元々の顔立ちか、ちょっとフィーリンを思わせる。一幕はザンレールの着地が甘い場面もあったけれど、二幕三幕は踊りもキレて立ち居振る舞いも、これはまさしくボリショイのジャン・ド・ブリエンヌと思わせてくれた。あのクラッススが…と。

ライモンダ全幕の白眉の一つ、ライモンダとド・ブリエンヌを中心としたグランパ全員で、女性ダンサーを担ぎ上げた男性ダンサーが片手をさっと離してポーズをキメるところ。カッコいい。あのグッとくるかんじは、映像じゃ伝わらない。

これで私の2012ボリショイ祭りは終了。今回のボリショイ祭りは、予想以上に満足度の高い舞台ばかりで、平日でなければもっと行けたのに…と返す返す惜しいのは日程なのでした。




# by enterachilles | 2012-02-08 23:54 | dance review | Trackback | Comments(0)

前回のボリショイ来日公演もアレクサンドロワの白鳥でした。今回は、東京での土日公演が2月4日のマチネ白鳥のみ、という社会人には大変過酷なスケジュール。というわけで、半年前から平日18:30に上野に行く日程確保が難しい社会人は、キャストがどうであれ今回の白鳥は土曜日マチネ最優先という人も多かったのではないかと予想。私もですが。というスケジュールの関係か、白鳥というネームバリューか、アレクサンドロワが主演だからか、東京文化会館は満席でした。

今回のボリショイは、スパルタクス→白鳥→ライモンダという順番で、グリゴロ新改訂版も2度目の鑑賞ということで、パフォーマンスに対するテンションは正直スパルタクスには及ばない。グリゴロ新改訂版のスピーディーだけど端折った感がないところ、踊りまくりの白鳥プロダクションに1幕1場の乾杯の踊りのカッコよさ(自分がコールドだったら、乾杯の踊りの男性コールド3列目希望)、アレクサンドロワのバレリーナの品格にはシビれましたが。

そう、とにかくアレクサンドロワの白鳥/黒鳥に今回の公演は尽きるのだろうと思います。ジークフリートのスクヴォルツォフは、クセのない踊りで回転も跳躍も涼しげにこなす、普通に素敵なダンサーなんだけれど、ボリショイ!アレクサンドロワのパートナー!という意味では物足りないのは否めない。フィーリンもウヴァもダンサーは引退、ワシーリエフは移籍となると、アレクサンドロワに張り合える男性ダンサーは誰になるんでしょう。フィーリンが引っ張ってきたチュージンン?ツィスカリーゼは相変わらず日本には来てくれないし、最近の彼のボリショイ首脳陣へのつっかかりっぷりだと、彼もあまり期待できないか…。

アレクサンドロワの白鳥は、そうクセがあるわけではないのだけれどステージを引っ張っていくパワーがある。芯の通った白鳥。たおやかなアダージョと対比的な2場ラストのアントルシャ+パッセの力強さにあふれたシークエンス、3場グランフェッテの場をさらう存在感。(ニーナばりのスピードと、全シングルながらも変則ドゥヴァンの回転を交えたグラン)
2幕3場の黒鳥PDDでは、アレクサンドロワとスクヴォルツォフのタイミングが合わず、特にピルエットのサポートで時折ふらつく場面がみられた。ただし、そんなサポートのまずさを余裕で受け流すことができるのが、アレクサンドロワのプリマとしての力量か。(ギエムだったら、こんなミスがあったら公演後パートナーは激しく反省会だろうな…といらぬ心配をしてしまうのだけれど、アレクサンドロワだったら優しくフォローするのではなきあと勝手に妄想)

グリゴロ新改訂版の白鳥は、王子の物語であるというところで残念ながらスクヴォルツォフ自身には全幕を通して場をさらってゆく存在感はない。しかしながら、アレクサンドロワの白鳥は、「運命に翻弄されるかわいそうなお姫様」ではなく、4場でのバッドエンドを予見する存在としての白鳥。だからこそ、彼女の黒鳥も同じ運命の表象として、白鳥の裏返しの表現がとても自然に思える。彼女の存在で、グリゴロの意図した白鳥のプロダクションは成立していたように思われた。

他キャストとしては、ロットバルトのラントラートフは意外とフツー。邪悪さというよりは、わりと洗練されたロットバルトだよなー、と思いました。王子とロットバルトの対峙にもっと緊張感があると、白鳥は面白いんですけどね…。オイシイ役柄、道化はデニス・メドヴェージェフ。道化の踊りに対する要求水準は高くなってしまうので…ボリショイとしては普通レベルの道化かな。スペインの王女を踊った、チナーラ・アリザーデというダンサーの踊りが好みでした。伸び伸びとスケールの大きい踊り。白鳥sのコールドさんたちは、ボリショイってやっぱりバレエ・ブランのコールドがロシアにしては揃わないよねぇ…と。まあ、ボリショイにそこは求めないですが。4羽が異様にガタガタしていたように見受けられました。

さ、次はライモンダです。


# by enterachilles | 2012-02-04 23:56 | dance review | Trackback | Comments(0)

ボリショイのスパルタクス爆弾が炸裂した上野。
2月の東京はこれでもかってくらい公演が重なっていて、この日はPOBグループ公演最終日とKバレエのシンデレラ初日、スパルタクスの東京最終日が五反田と渋谷と上野であるという、「これ、限られたバレエの観客のパイを奪い合うという、主催者にとっても何ひとつ良いことはなく、観客としてもスケジュール調整が大変になるだけだよな」という感慨をもって、私は文化会館に向かったのでした。ていうか、ワタシはバレエ初めがワシーリエフのスパルタクス全幕という、なんとも豪華な幕開けだったのですね。(他公演はスケジュール調整が難しく…泣。最近平日公演が多いんだもん)

ちなみに私、数年前にワシーリエフのスパルタクスはモスクワで初鑑賞。そのときのキャストは、ワシーリエフ/ヴォルチコフ/カプツォーワ/グラチョーワ。グラチョーワのエギナがこれでもかってくらい艶かしく、カプツォーワのフリーギアが可憐で、ヴォルチコフはちょっと頼りなく、ワシーリエフの凄まじいスパルタクスっぷりに、モスクワに居を移したいと思ったものです。でも、もうワシーリエフのスパルタクス全幕をボリショイで観られないんですよね…ほんと、スパルタクスだけでもいいからゲストとして出てほしい。それくらい、彼のスパルタクスは当たり役。ボリショイ男子に囲まれたワシーリエフのヒロイズムと苦悩。彼の踊りには苦悩がよく似合う。
スパルタクスという作品自体もやっぱ、これぞボリショイ、ユリゴローヴィチ、ハラショーと叫びたくなる魅力に溢れております。普通の全幕ものって、主役PDDで観客の気持ちが最高潮になり、その他群舞シーンではちょっと気がゆるむものですが、この作品は逆。男子群舞がメインで、群舞と群舞の間にサンドイッチになっているソロ=モノローグやPDDで緊張が解ける。ロシア旅行に同行した連れはあまりパフォーミング・アーツを観にいくというカルチャーを持たない者だったのですが、私がミハイロフスキーのくるみ、マリインスキーのミックスプロとバフチサライの泉、ボリショイのスパルタクスと明るい小川と連れ回したところ、「スパルタクス」面白い!と感想を漏らしておりました。バレエ初心者には、意外とチャイコ三大バレエ的な古典ではないところから入ってもらった方がバリアは低いのかも。

さてさて、どうしても今回の公演の感想はモスクワでの衝撃のスパルタクス体験 w/ワシーリエフとの比較になってしまうのですが、文化会館では全体が俯瞰できる位置で鑑賞したので、モスクワのときと比べると自分がかなり冷静に観られたことがわかります。それほど、ワシーリエフのスパルタクス初体験は衝撃なのですよ…。あと、モスクワの観客の熱気にも圧倒されてたのかな。

あ、あと音楽。東京でも幕開きから、オケの鳴らしっぷりが素敵。もう、じゃんじゃんやっちゃって!という気分になります。

ワシーリエフのスパルタクス@東京2012は、なんだかラインがシャープになっていて(髪型もボリューム抑え目で、雰囲気変わったなー、と)「跳んで跳んで跳んで」はモスクワでのときよりも力任せ感が薄れていた。踊りこむって、こういうことなんだろうな。見事としかいいようのない跳躍のひとつひとつが、すべてコントロールされている。グランジュテだけを跳び続けても、彼なら一つの作品になりそう。呆気にとられる、という感覚を味わえる。そしてスパルタクスとしての立ち居振る舞い。ワタシの中では、スパルタクスの基準がすべてワシーリエフで上書きされている。ヒーローになることを運命付けられ、苦悩し、そして運命付けられた死。あまりにもborn-to-be-Spartacusで、全3幕があっという間。

ヴォルチコフは、(あ、ちなみにカーテンコールの登場順は、フリーギア⇒エギナ⇒クラッスス⇒スパルタクスなので、つまりそいうこと)良くなっていた。全体的に。ちょっと存在感が弱いかなぁ、と数年前は思った記憶があるのだけれど、今回の公演では単純なオトコだけど運よく勝ち組で、情婦エギナが体を張って支えてくれるのでピンチも他人の力で乗り越えちゃった、みたいな能天気さがスパルタクスの死のドラマを引き立てる。

アラシュのエギナは、ソツなく力強さのある美しいラインの踊りなんだけど、もう一つクセがあるといいなー。グラチョ先生のエギナを脳内再生してしまう。ただ、今回は比較的冷静だったので、エギナのキャラクターを考えながら観られた。愛人、誘惑、権謀というブラックな形容をされるエギナだけど、意外と古風なんだなーと。オトコを支えるオンナ、だものね。クラッススにとっては、同志でもあるわけで、「共に戦場に赴き、共に戦う」のね。フリーギアとの対比で考えると、少なくともこの作品でのフリーギアの造形が「受け身なオンナ」であるからして、そりゃあエギナのほうが比重高いよねー、と思ってしまう。

ルンキナのフリーギアは、以前ガラでPDDを観て、そりゃあイイでしょうねぇという期待通り。ワシーリエフとの身長差がちょっと気になった(という意味ではカプツォーワとのほうが違和感がなかった)のですが、あの幸薄い儚げな(失礼!)フリーギアはルンキナならでは。

図らずも移籍直後のワシーリエフのスパルタクス@ボリショイ軍団が観られたということで、かーなーりジャパンアーツの評価上昇中。さ、次は白鳥です。

# by enterachilles | 2012-02-02 23:12 | dance review | Trackback | Comments(0)

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